ホンダの大型スポーツツアラーVFR1200F。一時期ホンダのカウル付きバイクはこのVFR顔が主流になったので見覚えの有る方も多いのではないでしょうか。フロントからタンクにかけて滑らかに一体化されたカウルは流麗そのものなデザインです。
VFR1200F 2010-
サイドカウルにはウインカー等の穴は一切無く、非常に綺麗なラインに仕上がっています。その代わりミラーがビルドインタイプで、これも造形が凝っています。VFR1200Fの心臓部に使われたのは1236cc76度バンクのV型4気筒エンジン。やや狭角ぎみのV型エンジンですが、これはエンジン位置を可能な限り前に出して十分なスイングアーム長を取れるエンジンの長さと給排気系の取り回しに制約を受けないエンジンの高さのバランスを考えてこの数字となっています。狭角のV型エンジンの為、1次振動が発生しますがそこは28°位相ピンクランクシャフトを使用することでライダーに不快感を与えないレベルに抑えられています。更にカムとロッカーアームの組み合わせで4本のバルブが一つのカムシャフトで駆動するユニカムバルブトレインを採用し、シリンダー上部のコンパクト化・軽量化に成功しました。肝心のピークパワーは111馬力/7500回転と、高速道路でも余裕の有る充実した出力を発揮します。VFR1200Fが主に走行する公道においては、常識的に使うならこれで足りないことはまず有りません。またVFR1200Fには6速MTに加え、ホンダが開発したDCT(Dual Clutch Transmission)が設定されているのがポイントです。2つのクラッチがシフト操作でそれぞれ交替に直結することでMTに比べ素早いシフト操作を簡単に実現します。次のギアが走行中に常に準備されている状態のDCTは、シフト操作中のトラクションの変動も少なく、安定した走行を可能にしています。トラクションコントロールも勿論搭載していますから、不意のリアホイールの空転の際はエンジン出力を抑えてグリップを回復してくれます。ブレーキにはコンバインドABSを採用し、フットブレーキの操作に合わせて前後輪でバランス良く制動力をかける構造です。車重268kgから278kgと非常に大柄なバイクですから、安定したブレーキ操作が出来る様、ホイールロックを防止するABSも標準装備されています。
駆動方式はメンテナンスフリーなシャフトドライブ方式というやや珍しい方式となっています。このタイプでは、シャフトやギアはケース内にオイルと共に密閉されて常に適度な潤滑作用が働きます。チェーンドライブの様な注油や清掃といった日常のメンテナンスは必要無く、耐久性も高い仕組みです。その代わりコスト面で割高で、VFRの様な大型かつ高級なバイクに採用されるのが一般的ですね。片持ちスイングアーム形状は見た目も美しく、右サイドからのリア周りをスッキリと表現します。デザイン性の高さ、そして何よりホンダのV4エンジンが搭載されているという点で希少なVFRシリーズ。VFR1200Fは特にツアラーとしての快適性の高い大人のバイクです。