ホンダがMoto3等レース参戦用に供給しているNSF250R。RS125Rに変わる本格的なレーシングマシンとしつつ、Moto2やMotoGPに比べれば一般にも手の届く価格でライダーが参戦しやすくなっています。
NSF250R 2012-
NSF250RはホンダがMoto3に供給する目的で開発したバイクです。それまでのRS125Rと幾つかの部分を共通しつつ、「Next Racing Standard」をコンセプトに掲げ制作されました。
Moto3のレギュレーションに合わせる形で、エンジンは249.3cc4ストローク単気筒となっています。多気筒エンジンに比べ、高出力化の難しい単気筒エンジンですが、レース専用車両ということでNSF250Rに積まれた物は非常にハイパワーです。ピーク時には現行CBR250Rの1.5倍以上になる48馬力/13000回転を出力します。単気筒ながら13000回転まで回してピークパワーを得る超高回転型のエンジンです。一方4ストロークらしくパワーバンドは広く、扱い易い特性に仕上げられています。前方吸気・後方排気でマスの集中化を突き詰めたレイアウト、チタン材の使用で軽量化したバルブ等、コストは十分にかけられている印象です。加えてNSF250Rの乾燥重量は84kgしか有りません。この見た目でスーパーカブより軽いというまさにレーサー然としたバイクです。旋回性を左右するホイールベースも1219mmと非常にショートホイールベースな仕上がり(参考例としてGROMで1200mm)。これらのスペックから非常にクイックなハンドリングマシンに出来上がっています。
価格は250ccで140万円と下手な大型バイクよりも高価ですが、このスペックならそれも納得、というよりむしろ相当お買い得に思える一台です。
更に強化されたNSF250RWも。
Moto3クラスは近年ホンダVSKTMの競争が激化しており、ホンダは事実上のワークスマシンであるNSF250RWという強化モデルを供給しています。その為、2011年に投入されたこのNSF250Rも国際的なレースシーンでは既に過去の物という扱いです。
上の写真は2015年チャンピオンのイギリス人ライダー、ダニー・ケント選手とそのNSF250RW。NSF250Rに比べると大柄なセンターアップマフラー等細部に変化が見られます。エンジン、フレーム等基礎部分は完全に別物と言われ、その価格は市販のNSF250Rとは比べ物にならないという話も。フロントサスペンションはオーリンズ、ブレーキローターはBremboという定番の組み合わせ。フロントに関してはブレーキディスクを296mmから219mmと大幅に小径化しています。ホイールは17インチと変わりませんが、フロントタイヤは太く、リアタイヤは細くなっています。タンク容量は1L分小さくなり、車両重量も83kgとわずかに軽くなりました。ただしMoto3ではライダー+バイクの重量は、2016年のルール上で最低152kgと決まっています。小柄なライダーの場合はバラストで調整しないといけません。
総合的な戦闘力では、NSF250RとNSF250RWの間には相当大きな差が有るようです。元々NSF250Rを圧倒していたKTMのRC250Rに対抗する目的で作られたわけですから、これは当たり前ですね。
下位クラスは市販レーサーで参戦コストを抑制する、というホンダの当初の予定とは裏腹に、勝つ為にはワークスマシンが必須でトータルのコストもかなり高いという熾烈な争いのクラスへと変わってしまいました。
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上位カテゴリーのMotoGPに比べるとこのクラスは各車両が非常に接近してバトルすること、更に軽量な車体を活かして上位カテゴリーに匹敵する様なコーナーリングスピードで曲がっていくのが特徴です。接触が多く、適度な荒っぽさも楽しめるレースになっています。
Moto3クラスを走る日本人としては、尾野弘樹選手がIDEMITSU Honda Team Asiaより参戦しています(2016年現在)。Moto3は非常に混戦になるクラスで、どの選手も他車との接触のリスクが有り、ハードなレースになります。イタリアGPでは6位と善戦した尾野選手ですが、怪我の為オランダGPは欠場しています。次のドイツGPでは復帰するので今年もまだまだ活躍するシーンを見せてくれそうです。今年のヘルメットは、SHOEIのX-Fourteenで、頭頂部に描かれた歌舞伎の隈取がとても印象的ですね。