スズキが先日市場に投入したリッタークラスのネイキッド、GSX-S1000。型番もGSRでなくGSXとし、エンジンもGSX-R1000譲りと有って大いに話題となりました。野獣を思わせるスタイリッシュでスズキらしいデザインも魅力です。
GSX-S1000 2016-
ネイキッドバイクですからカウルは最小限の印象です。「S」をモチーフにした鋭さの感じる形状をしています。ポジション的にはR1000に比べると明らかにアップライトに調整されていますね。流石にサーキット走行用のGSX-R1000よりは、ストリートモデルらしく長時間のライディングでも疲れないほどよいポジションを取っている感じです。マフラー形状は大きく変更され、GSX-R1000のドンとした迫力の有る物から、シュッと細身の物になりました。スズキの意図する「大草原を走る野獣」のスピード感みたいな物は上手く表現できているのではないでしょうか?
ピークパワーは145馬力/10000回転と、リッターSSをベースにしたストリートファイターの中でもかなり高い数字を出しています。エンジンの設計としては、ボアストローク比が73.4×59mmと、現行R1000の74.5×57.3mmよりロングストローク寄りな数字です。
GSX-S1000のエンジンは、上の写真のモデル、2005年から発売されたK5からK8モデルのエンジンを使用している様です。今回このエンジンを使用するに辺り、スズキでは最新モデルらしく各部をアップデートしています。例えばピストンは有限要素解析を用いて剛性を落とすことなく、軽量化することでフリクションロスを低減しました。カムプロフィールも見直され、想定される主戦場のワインディングやストリートに見合った使いやすさを追求しています。これをマウントするシャーシやフレームも専用に設計された物を使用し、しっかりとした剛性感と接地感をライダーに感じさせます。車重は209kgと下位クラスのGSR750よりも更に軽い仕様です。車体のサイズ感もほぼ同等の割に出力は1.5倍近く向上する為、GSR750にもっとパワーが欲しかった人にはおすすめの選択肢と言えるでしょう。
またストリートモデルとして開発するのに合わせて、GSX-S1000では3モードのトラクションコントロールを採用して来たのも見逃せないポイントでしょう。SSのGSX-R1000はリアタイヤのスライドを抑制するハイテク装備が無く、どちらかというと他社に比べ硬派な作りでした。そこがスズキのこだわりなのかな、と思っていましたが、荒れた一般道を走るGSX-S1000ではそこは見直され、不意にグリップを失う様なことが有っても、ハイサイドを起こしたりすることなく、バイク側が調整してくれます。走行中にリアタイヤのスピンを感知した段階で、エンジン出力を絞り、安全にグリップを回復させてくれます。これも3つのモードに分けられており、ライダーの好みでシステムの介入を抑えることが可能です。
フルモデルチェンジする新型GSX-R1000に先駆け、スズキの最新鋭の技術を盛り込んで発売されたこのGSX-S1000。国内の取り扱いもばっちりなモデルの為、入手性の高さもポイントです。価格も110万円弱と年々価格が高騰するスポーツバイクとしてはコストパフォーマンスの高さの光る一台です。