ホンダのV4を今に伝える貴重なフルカウルバイク、VFR800Fのご紹介です。単色にまとめられたシンプルなカラーリング、スイングアームやハンドル周りの凝った造形等、CBR系統とは異なる上品な佇まいをした一台です。
VFR800F 2014-
適所に設けられたエアダクト、エンジンを覆い隠す大型のカウルはいかにも本格的なスポーツバイクらしい雰囲気を演出しています。スイングアームも片持ち仕様になっており、右サイドから見た時のリアホイール周りが非常に美しく映えます。流れるような細リムを使用したホイールが流麗な雰囲気を演出しています。VFR800Fはフルカウルを装備しつつも、ポジションはあくまでロングツーリングを余裕でこなすスポーツツアラー。スーパースポーツに比べればハンドル高も若干高く、長時間のライディングに対応可能です。とはいえあくまでもSSと比べれば快適…ぐらいの前傾姿勢ですが。VFR800Fは4通りのポジションに調節可能で、シート高やハンドル高を変える事でライダーの体格に有った乗車姿勢を作ることが出来ます。自動車に比べるとポジションの自由度に制約を受けるバイクにおいて、非常に配慮されているポイントです。
搭載するエンジンはホンダが常に強いこだわりを見せる水冷V型4気筒エンジンのRC79E。90度バンクとこれまたV型エンジンとしては理想的なレイアウトです。72×48mmとショートストロークなエンジンは10250回転で105馬力を発生します。VFR800Fは国内仕様でも海外と同等の馬力が出ているので有り難いですね。更にこのV4エンジンにホンダお得意のHYPER V-TECを装備、ホンダらしい技術を全部詰めてしまったマニアックなエンジンになっています。低回転で運用する間は2バルブで動作することで燃費性能を向上し、高回転に達すると4バルブに切り替わり給排気の効率を大幅にアップ、力強く伸びるパワー感を実現します。
快適なツーリングをサポートする為に、ABSにTCS、グリップヒーター等の快適装備を標準で装備しています。105馬力と既に公道で使うには十分なパワーを持っていますから、不意のスライドを防ぐトラクションコントロールが有ると安心です。242kgとかなりの重量級の車体は、ダブルディスクと4ポットのラジアルマウントブレーキキャリパーが確実に止めてくれます。多少荒れた路面を走っていても、ABSが働くことでホイールロックを回避し、安全に止まることが可能です。ただし最小回転半径3.2mとあまり小回りが得意では有りません。フォークは正立ですが、アルミの削りだしとアルマイト仕上げのアウターチューブで、非常に高級感の有る仕上がりです。VFRはデザイン的な拘りが強く、眺めていても飽きない外観をしています。
メーター周り、リアのテールランプの造形は見事の一言です。所有したライダーの満足感というのは非常に高いバイクと言えるでしょう。中身と外見の両方で非常に満足のいくフルカウルツアラーと言えばこのVFR800Fです。問題はこの凝ったパッケージの為にミドルクラスの排気量で135万円、NC750Sの2倍近いという脅威のお値段です。しかしホンダのV4エンジンをこの価格で購入できるなら、これでも安いのかも知れません。余談ですが、北米ではVFR800Fは「インターセプター」の名前で販売されていて、サイドカウルのロゴもちょっとカッコ良くなっている。
VFR800X 2014-
VFR800Fとパワートレインを共有しつつ、デュアルパーパスという全く異なるツアラーのスタイルにまとめたVFR800X。このスタイルになる過程で、セパレートハンドルはバーハンドル化され、よりアップライトなポジションになっています。683mmと幅が広く設計され、不意に押して歩く際にも重い車体が安定します。ウインドスクリーンは大きく、角度も立っている為、走行風を防ぐ効果も抜群です。地上最低高はVFR800Fよりも30mm上げられ、荒れた道を走ってもエンジン下をヒットしない様に配慮されています。ABS等の電子制御もそのまま採用されており、この二つはスタイルの好みでどちらを買うか決めて問題ありません。
防風性能に優れるフルカウルのVFR800Fか、ポジションの快適性に勝るVFR800Xか、なんとも悩ましいですが、どちらもツアラーとして非常に優秀かつ丁寧な作りをしています。