ホンダのST1300は縦置きV4エンジンを搭載した大排気量ツアラーバイクです。ホンダの同クラスのスポーツツアラーVFR1200Fと比べても更に長距離長時間のライディングを重視したパッケージになっています。
ST1300 2002-
パニアケースを装備しているために見た目の重厚感はかなりの物です。これも左右それぞれ35Lと収納力は十分です。それでもホンダ最大のクルーザー、ゴールドウイングに比べるとまだ小さく、全長2282mm×全幅935mm×全高1332mmに設計されています。
ライダーが疲労しない様にハンドル高は高めに調整されています。フルカウルですがポジションは比較的ネイキッドに近く、かなりリラックスしたものです。
大型のウインドスクリーンは電動の調整式を採用しており、ライダーや走行シーンに合わせて可変させることが出来ます。ハンドガードとウインカーを兼ねたスポイラー、走行風をシャットアウトする大型のフルカウルの効果も合わさり、走行中の快適性は高めです。シート高は790mmをベースに±15の包囲で3段階の調整が可能です。
サスペンションはフロントに45mmのエアーアシスト正立フォーク、リアにはHMAS(Honda Multi Action System)を搭載したモノショックを装備しています。ブレーキは310mmのダブルディスクとリアに316mmのシングルディスクといういずれも大径のディスクを組み合わせています。フロントには7スポークのインナーローターを採用することで、バネ下重量を削減しました。
ABSは前後連動するコンバインドABSが装備されており、286kgの車体をより安全に素早く減速させることが出来ます。ホイールは3スポークの鍛造アルミニウム製で、フロント18インチ、リア17インチとなっています。
エンジンは1261ccの90度バンクV型4気筒。ボアストロークは78mm×66mm、圧縮比は10.8:1です。吸気バルブは31mm、排気バルブは27mmを使用しました。最大出力は117馬力/8000回転、最大トルクは11.93kg・m/6500回転となっており、低い回転数からでも十分な加速力を発揮します。
ツアラーらしい直進時の安定感を出すため、クランクシャフトの位置を20mm下げ、車体の低重心化を実現しています。更に2軸バランサーの効果で大排気量エンジンが発する振動も上手に抑えられ、ライダーに不快感を与えません。シリンダーのスリーブにはセラミックとグラファイトを含浸させたアルミニウム粉末が使用されており、耐摩耗性を向上させています。ツアラーバイクはロングツーリングで走行距離が伸びる傾向に有るため、エンジンの耐久性もそれに準じた高い物が要求されます。
トランスミッションは5速ですが、これは結果的にエンジンの全長を40mm短くすることに繋がりました。ライダーがステアリング軸に近づくことで、走行中のハンドリング性能も更に高まっています。また加速を補うため、多少ショートレシオ化されているのも特徴です。駆動方式はフリクションロスが少なく、メンテナンスフリーなシャフトドライブ式が採用されています。
フレームは新型のアルミ製3ボックスツインスパーフレームが採用されています。スイングアームも同様にアルミになっており、スチールフレームに比べより軽く、更にスポーツ性能も損なわない高い剛性を実現しています。
燃料タンクの容量は29Lとかなり大きく、ノンストップでロングライドを楽しめる高い航続性を持っています。リッタークラスはスペックに優れるスーパースポーツが人気が有りますが、ツーリングを安全・快適に走行することに注力したフルカウルツアラーも魅力的な選択肢です。