私のバイクライフは単気筒エンジンから始まったわけですが、今後の乗換えでは恐らく多気筒エンジンに移っていくことが予想されるので単気筒というスタイルのメリット・デメリットを簡単にまとめたいと思います。
シリンダーは1個しか無いよ
単気筒エンジンとはその名の通り、気筒つまりシリンダーが一つしかないエンジンのことです。断面図付きの写真をご用意致しましたので参考にして下さい。ちなみにこれはホンダのCBR250Rのエンジンです。
たった一つのシリンダーの中で燃料を爆発させる最もシンプルなスタイルが単気筒エンジンになります。シリンダーの数が少ない都合上、部品点数も当然少なく、軽くなるのが特徴です。メンテナンス性にも優れており、構造のシンプルさがそのままメリットとなっています。無駄が無くて美しいですね。複雑な仕組みはともかく、まずは単気筒はシリンダーが一つ、2気筒なら二つと覚えていけばOKです。
基本的にトルク型の特性
単気筒エンジンは、同じ排気量の多気筒エンジンと比べた時、トルクが高い傾向に有ります。トルクとはエンジンが持つ力強さのことです。この数字が高ければ高い程エンジンがタイヤを通じて路面を蹴飛ばす力が強いことを表しています。
このトルクをより大きくする為には、エンジン内の爆発力を上げることが必要です。その為には燃料を爆発させているシリンダー内の容量が大きいほど爆発力が大きくなるのは、何となくイメージしやすいのではないでしょうか。同排気量で比較した時、単気筒エンジンは1つのシリンダーしか持たないので当然1つ当たりの容量が大きくなるのです。多気筒化を進めると、単気筒に比べシリンダーの容量が少なくなるため、この爆発力が弱くなってしまいます。
単気筒エンジンは構造上シンプルと言いましたが、そのシンプルさからより大きな爆発力を得ることが出来るわけです。特に低い回転数のトルクが分厚く、発進加速も力強いです。セローの250ccのシリンダーが出すトルクでも、フロントがリフトする感触がはっきりわかるくらいの加速力が出せます。
逆にトルクに秀でることが仇となり、多気筒エンジンほど高回転、高出力にし辛いという構造的な弱点を抱えています。シリンダーの容量を上げた結果、運動するピストン周りの重量が増加し、慣性の力による負担が大きいのが悩みどころです。その結果、回転数を上げる事が出来ず、また高回転時の力の上昇も穏やかです。つまり単気筒エンジンは無理に回してもあまり旨味が有りません。
その為、大排気量SSの様なハイパワーを追求するバイクに単気筒が採用されることは有りません。このクラスの主流は並列、あるいはV型の多気筒エンジンです。この辺り一長一短ですが、単気筒エンジンはどうしてもカタログスペックで見劣りしてしまいます。バイクの醍醐味を高回転型エンジンと捉える方にあまり好まれないのがこの部分ですね。
ライダーを痺れさせる強烈な振動
シリンダーを大きく出来る単気筒エンジンは、その構造上エンジンの振動が大きくなる傾向に有ります。爆発が多気筒に比べ大きいわけですから、当然の結果です。また2気筒以上のエンジンが複数のシリンダーから発生する振動を打ち消すことが出来るのに対し、単気筒はダイレクトな振動をライダーに送ることになります。この強烈な振動は、長距離ツーリング時の手の痺れや体の疲れとして現れてきます。
ドドドドと乗車していてはっきりとわかる振動を発するため、ライダーには粗雑なエンジンフィールと感じます。これが嫌いな人ははっきりと多気筒エンジンを支持するわけですが、逆にこの振動を鼓動感と表現される方もいます。性能とは別問題に、エンジンの存在を感じやすいため根強いファンがいるのですね。
走行中のエンジンノイズですが、これは結構やかましい音が出てしまいます。最大の対策はあまりエンジンを回さず低い回転を利用することです。しかしギアが4速ほどしかない、排気量がそもそも小さい等、高回転まで回さざるを得ない単気筒車は意外と多いです。静かなツーリングを楽しみたい方にはあまりおすすめしないのが単気筒エンジンです。
燃費は基本的に良い数字が出る
パーツ点数が少なく軽い、フリクションロスが少ない、低速トルクに優れ極端な高回転を使わなくて良い。これらの理由から単気筒車は相対的に燃費が良い傾向に有ります。上のGROMの様な遊びバイクでも公称燃費が60km/Lを超えるので非常にエコロジーです。商用車として広く使われているスーパーカブ等はこれを更に上回るのでお財布に優しいですね。
バイクはどちらかというと、高回転エンジンが持て囃される傾向に有りますが、このエコさはもっと評価されて良い様に思います。