ヤマハの大人気ネイキッドであり、多くのバリエーションモデルも登場しているMT-09。2気筒に近いパルス感を保ちつつ、4気筒並にスムーズな回転を実現した3気筒エンジンと、その近代的なスタイルで人気が高いバイクです。
クロスプレーン・コンセプトから生まれた3気筒エンジン
MT-09に採用された3気筒エンジンが重視した部分は、トルク変動が少なくアクセル操作に合わせて綺麗にトルクが上昇すること。ライダーがアクセルを開けた時に、ライダーの期待通りのエンジンパワーが常に出力されることで、操作に一体感を覚える様なエンジン特性を狙っています。MT-09に使用された120度クランクでは、ピストンの駆動に伴う慣性が各気筒で打ち消されることになり、結果として慣性に伴う余計なトルクが消え、アクセル操作でライダーがトルクをコントロールしやすくなっています。またヤマハの電子制御スロットルYCC-Tとの組み合わせで、ライダーのアクセル開度に応じた最適なスロットルバルブの操作を計算することで、よりエンジン性能を引き出してくれます。
MT-09のエンジンはサイズ的に設計されており、車体全体をスリム化する重要な要素になってきます。直列3気筒と4気筒を比べた場合、極端に言えばシリンダーが一つ減るわけですから横幅がずっとスリムです。850ccと一定の排気量を確保しつつ、600cc直列4気筒並のサイズと重量と非常にコンパクトにまとめられています。
カウルの無いネイキッドスタイル、前後共に適度切り詰められた車体、それにダウンショートマフラーが合わさり、エンジン付近への凝縮感が強くなっています。運動性能を高める為のマスの集中化を徹底的に行ったことが横から眺めると良くわかりますね。フレームもアルミダイキャスト製でMT-09の求める軽量さの際立つ内容です。
開発時にはネイキッドとモタードの融合ということで、ネイキッドバイクに見通しの良いアップライトなポジションと幅が狭くコンパクトゆえの扱い易さの概念が持ち込まれています。その為、MT-09 TRACERの様なデュアルパーパスへの親和性も高いというマルチに活躍できるバイクとなりました。ネイキッドバイクとして見たMT-09は実際とても軽く出来ており、188kgと400ccネイキッドに迫る重量です。その上110馬力のエンジンパワーですから、非常に軽快な加速フィールをしています。
デザイン的には細く切り上がったリアシート周りはモタードらしさを感じる部分です。ライトも従来のネイキッドでありがちな丸目から近未来的なライト形状を採用したことで、SFチックな顔立ちをしています。今までの通例からガラッと変えたスタイルに、これが次世代のネイキッドのデザインなんだというヤマハの強い意気込みを感じます。一方、クラシカルなネイキッドのデザインの需要も根強い様で、それが後にXSR900へと続いていくわけですが。
派生車種も続々
先進的なデザインのMT-09とは対照的に、クラシックな方向にデザインを変更したXSR900が先日発売されました。先進的なデザインのMT-09に対し、こちらは多くの方がイメージするネイキッドバイクそのもの。走行性能も申し分なく、ワインディングで大活躍してくれる一台です。
デュアルパーパス仕様のTRACERも人気が高いです。MT-09の弱点だった積載性の制約も改善され、大容量のタンクやナビの追加でロングツーリングに使いやすくなっています。MT-09譲りの軽量さは活かされており、この類のバイクが始めての人にもおすすめです。