カワサキのZX-14Rと勢力を2分するスズキのメガスポーツ、隼。バイクに詳しくない方でも聞いたことの有る超メジャーバイクです。ひじょうに特徴的な顔立ちもスズキならではですね。
GSX1300R 隼 1999-2007
現行の隼に対し、こちらはモデルチェンジ前のいわゆる旧ブサ。現行型に比べるとヘッドライトやサイドカウル、リアシートカウルなど細かい造形に多数違いが見受けられます。
こちらのシンプルさというかスーパースポーツ直系のフォルムが好きという方も多そうです。
特に300km/h規制がかかるまでの99年式と00年式には340km/hまで刻まれたメーターが付いてくるなど伝説の多い車種でした。
市販バイクの最高速度に上限を作ったモデルですし、スズキのロングセラーバイクとして今なお販売されています。
ブレーキはニッシン製の6ピストンキャリパー。重い車体を一気に減速させられる強力な足回りです。ただそれでも隼はビッグバイクなのでブレーキング時の車体の重たさというか慣性で前へ進んでいこうとする力をかなり感じます。ホイールは前後17インチにタイヤサイズがフロント120/70-17、リア190/50-17です。
ポジションはスーパースポーツに近く前傾姿勢は深めです。太いトルクが走りやすくロングツーリングに使うライダーもいますが、BMWやトライアンフなどの欧州製大排気量ツアラーに比べるとどうしても疲れ易いです。元々ツアラーではないので当たり前なのですが、もし最初からツーリング用とならバンディット1250Fなども比較してみると良いかもしれませんね。。
エンジンは1298ccの水冷並列4気筒。ボアストローク81×63mm、圧縮比11:1のショートストロークエンジンです。最高出力は海外仕様のフルパワーで174馬力/9800回転、最大トルク14.1kg・m/7000回転で当時のライバルだったCBR1100XXなどメガスポーツ勢の中でも頭一つ抜けた性能を叩き出しました。アクセルオンで体がおいていかれる様な加速は一度体感すると忘れられません。ただし街中では少しアクセルワークに繊細さを要求されることから、マイナーチェンジ後はパワーモード機能であるS-DMSが搭載されました。
スーパースポーツに比べるとややロングホイールベースな車体で1485mmに設計されていることから直進性重視のセッティングに見られがちです。実際の所、国内の交通事情で出せる100km/hくらいが実は一番左右へ自在に動ける速度域で、怒涛の加速力でレーンチェンジもスパッと決まります。今でも高速道路で駆け抜けていく隼は多いですが、その理由は乗るとすぐにわかります。高速道路を一気に駆け抜けている時が一番楽しいです。その分乾燥重量215kgの車体は40km/hを割る様な狭い峠では一体感を欠くのも事実ですが。
Hayabusa 1300 2008-
隼に関して言えば、名実共にスズキのフラッグシップと表現して間違いないですし、現行のラインナップの中でも知名度に関しては抜群です。
現行のこの型は縦長のヘッドライト周りの彫りを深くしてより躍動感の有るフォルムに変更しています。
スーパースポーツ的なフルカウルよりも、隼独特の滑らかな曲線美のカウル形状を追求しています。
隼の売りは、現在も300km/hという最高速度で、それを支える高い直進安定性を誇る空力性能も持ち合わせています。現行モデルには300km/hにリミッターが付いていますが、それでも300km/hという速度域を想定したバイクであることは相違有りません。大きな車体も、それを覆うフルカウルも、空力を考慮して開発された機能品です。タイヤサイズは車体に見合った大サイズで、フロント120/70-17リア190/50-17と、特にリアタイヤは太めの物を履いています。
また隼といえば盛り上がった形状の独特なシングルシートの存在が挙げられますが、シングルシートで後部座席を座れなくしてしまうと、車検証の乗車定員と一致しなくなる為、警察に呼び止められる可能性が有ります。非常に隼らしいアイテムなのですが、装着時にはお気をつけ下さい。
重量級のボディを高速で走らせる隼はブレーキも強力で、310mmのデュアルディスクに4ピストンのモノブロックキャリパーを採用しました。現在のモデルは初期にNISSIN、後期にBremboのキャリパーが付いています。6ピストンから4ピストンになったことで、制動力ダウンと思われるかもしれませんが、ラジアルマウントモノブロックキャリパーは剛性と軽量さ、そしてブレーキング時のタッチに優れており、コントロール性は大きく向上しています。特に最新型は標準でBremboが付いてきているので、足回りを重視するなら最新の隼が最もおすすめです。
フロントフォークはKYB製の倒立フォークにDLC(Diamond-Like Carbon)処理を施し、フリクションロスを低減しています。リアサスペンションもKYB製で前後減衰力の調整が可能です。
エンジンは1339cc水冷直列4気筒を搭載しています。ボアストロークは81mm×65mmとショートストロークな設計です。メガスポーツである隼は、最大馬力で197馬力/9500回転を発生させます。最大トルクも分厚く、15.8kgf・m/7500回転とライバルのZX-14Rに引けを取らない高い数値を記録しています(ZX-14Rは16.1kgf.m)。法改正によって現行の隼は国内仕様もフルパワーになっていますから、ファンには嬉しい限りですね。
スロットルバルブにはSDTV(Suzuki Dual Throttle Valve)を使用し、ライダーのアクセル操作に合わせて開閉するバルブと、ECUで制御された2つのバルブが力強いトルクを実現しています。燃料を噴射するインジェクションもツイン化し、高回転時には2本目のインジェクションからサブバルブへ燃料が供給されます。この仕組みで燃焼効率、燃費の向上を図られています。
シリンダーは内部に磨耗に強いSCEM(Suzuki Composite Electrochemical Material)メッキを施したメッキシリンダー、ピストンは軽量なアルミ鍛造ピストン、バルブも更に軽量なチタンバルブ、コンロッドはクロモリ鋼に小さな球体を高速で当てて表面の硬度を上げるショットピーニング加工で高い剛性を獲得しました。
メガスポーツとして最高速を重視して生まれた隼。しかしあまりに高い出力は大型バイクに慣れないライダーには怖いもの。そういった要望に対し、スズキは2008年以降モデルにS-DMS(Suzuki Drive Mode Selector)を装着して対応しています。ライディング中はハンドルに設けられたS-DMSのスイッチ操作で3モードに出力特性を切り替えることが可能で、走行シーンに対してアクセルレスポンスが過敏な場合は、出力を徐々に落とすことで扱い易くしてくれます。雨の日や道の悪いシチュエーションでは少しマイルドなセッティングに切り替えれば安心です。
個人的に新旧の隼のライディングに一番影響してくるのはここだと思います。旧型は確かにアクセルオンで即吹っ飛んでいく様な加速を常にしますが、それだと街乗りや舗装林道など徐行速度で走る時はシビアで疲れるし正直しんどい…アクセルオンで姿勢が変わりやす過ぎて不安定になることもチラホラ。実際は多少マイルドなモードが付いていた方がストリート用のバイクとしては扱い易いです。
なので旧型と新型を今から買うなら多少高くても新型の方が良いです。
車両重量は266kgとスズキの中でも特に重い部類で、実際低速走行時は持て余します。シート高は805mmとそこまで高くないのですが、この大柄なボディを好む女性ライダーは少ないかもしれませんね。最小回転半径3.3mと小回りは正直そこまで得意とは言えません。しかしメガスポーツと呼ばれるだけの走行性能を持った貴重な一台ですし、豊富なトルクで普段使いからロングツーリングまでこなすツアラーとしても親しまれています。