ラッピング

痛バイクの自作について知りたい人が最初に読んでおきたいこと

隼 痛車

ここでは私が過去に痛バイクやそれに付随するグッズを製作してきた経験から、「これから痛バイクを作りたい!」という人向けに痛バイクの実践的な作り方を記述していきます。

痛バイクって?

痛バイクとは、自身の愛好するキャラクターを車両にラッピング、もしくはペイントしたオートバイのことです。広義的には痛車と同じですが、痛車の場合自動車も含まれるため、敢えてバイクを用いたことを強調したければ、痛バイクと呼んだ方がより相手にわかりやすくなります。痛単車など同義語も存在します。

またキャラクターの対象は2次元から実在の人物まで本当に幅広く、オーナーの裁量に任せられています。アニメや漫画、ソーシャルゲームまで対象は様々です。

今はラッピングがメイン

以前はエアブラシによる職人の手作業や自宅のプリンターを使ったシール制作で制作されていましたが、シートにイラストを印刷してそれを貼り付けるラッピングが普及してからは痛車も含め、この製作法が一般的になりました。

ラッピングはシートをボディに貼り付けて表面色を変える方法で、塗装に比べて手間がかからずカーボン柄の様な特殊な模様の再現も出来ます。

 

またラッピングの方が手軽にプロクオリティを再現しやすいというメリットが有ります。上の参考画像は一見プロクオリティに見えますが、個人で再現することも可能です。

ペイントに比べると手間がかからず、車体へのダメージも少ないです。

今日、痛バイクを作るなら、余程特殊な事情が無い限りラッピングで作ることになるでしょう。

痛バイクを作る理由は人それぞれ

2018年現在、痛バイクを作る理由は様々です。

完全なファンメイド作品ということも有れば、企業のプロモーションということも有り得ます。特に後者に関しては痛車が普及する前から企業PRの一環としてラッピング車両が制作されてきたという経緯が有り、親和性が高いです。また専用イラストの制作など相対的にコストをかけている傾向が見受けられます。

車両の選定は個人オーナーの場合、自己所有の愛車を使うケースがほとんどです。一方、痛バイク化が前提の場合はラッピングがしやすい車両や単純に市場の人気車両を選定します。

痛バイク化しやすい車両って有る?

痛バイクを作る上で、作業が容易なバイクは有ります。過去に私が実際に選定を行った中では、下記の車両です。年式も新しく、入手性の高いモデルを選んでいます。

ホンダ VFR1200F

ホンダ VFR1200F / VFR800F
スズキ 隼
・BMW K1300GT
ドゥカティ 959 Panigale

痛バイク化しやすい条件はとにかく広くてフラットな面積のカウルを持っているかどうかで決まります。

隼は個人的に現行型の方が作業難易度は低いように思います。ドゥカティのパニガーレシリーズは比較的カウルがフラットで、どれもラッピングはやりやすい形です。車両価格が高額なのはネックですが…。

CBR250RR

現行の250ccフルカウルでしたら、CBR250RRかNinja250が良い感じです。

凹凸の激しく、複雑なカウル形状を採用している場合、

・イラストがゆがむ
・カットする面積が増える
・手間が大幅に増加する
・用意するイラストそのものも制約を受ける

これらのデメリットが浮上します。イラストが歪むのは「魅せる」ことが前提の痛バイクでは非常に難しい問題で、本当は段差も避けたいほどです。

特にフラットな面積が少なく、スリットの細かい近年のスーパースポーツでは綺麗にイラストを見せることがとても難しいです。

カットする箇所が多いと皺が入りやすく、仕上がりの完成度を落すことにつながります。

ZX-10R

具体的な例としてはZX-10Rなどがこのパターンに該当します。これはメーカー純正のワークスマシンですら「Ninja」のロゴを入れるのに苦労しているので、最近の空力の発達したフルカウルバイクは年々痛バイク化しにくくなっているとも言えますね。

誰でも自作できる?

このページを開いた方の多くが自作を希望されていることかと思いますが、痛バイク自体は問題なく自作することが出来ます。むしろ自動車と異なり、個人でDIYするケースが多いです。これは相対的に貼り付け面積が少ないからと思われます。

自作する場合でポイントとなるのは、

・印刷に耐える高解像度イラストを用意できるか?

例えば印刷で一般的な350dpiのA4サイズなら、2894×4093(350dpi)というスペックが必要です。

Webで一般公開されている画像ではこれほど高解像度のイラストは中々見つけられません。Web公開にそこまでのスペックは必要ないからです。そのため、「インターネットで見つけたこの画像で作りたい!」となると印刷に耐えられる高解像度イラストを用意できるか、がまずポイントになります。

とはいえ実際にはもの凄く高解像度でなくても、ある程度引き伸ばしできる場合が多いです。この辺りは印刷する業者の腕の見せ所でも有ります。1m角を超えるような非常に大きなイラストを印刷するなら、一度業者へ相談してみましょう。

・車体は必ず洗車する

施工前には車体を必ず洗車します。これは車体表面に付着した汚れで貼り付けたシートが剥がれてくるからです。同時に気泡の原因にもなります。ペイントの場合でも塗料の乗りを良くするために洗車するのが一般的です。

どういう業者を使えば良い?

まず痛バイクは自動車に比べ凹凸が細かく、薄手で伸びるシートが必要です。3次曲面対応、と謳っているシートを使っているショップならその点は問題ないので、ショップ探しの一つの目安とすると良いでしょう。

逆にステッカー印刷としか書いてない場合、厚手のシートに印刷されるケースが有り、その場合は施工そのものが困難になります。

私は別に出入りの業者を隠す必要が全く無いので公開すると、のらいも工房さんへ長い間委託しています。後は、KT-Rさんも使っています。シートそのものにそれほど性能差は無く、納期面で使い分けることが有ります。KT-Rさんは年末など忙しい時でも早いです。

どちらも施工を委託出来る為、自作する必要が無いならお願いしてしまうのも手です。

ネイキッドやアメリカンでも出来る?

ネイキッドやアメリカンの場合、タンクやフェンダーといった限られたスペースを使うことになります。イラストサイズが小さくなる、という点を除けば問題なく可能です。むしろタンクやフェンダーといった個々のパーツが小さい分、作業時間も短く済むでしょう。アメリカンの場合、パニアケースは狙い目です。

またオフロードに関してはデカールキットが伝統的に制作されてきた特殊性から、こうしたラッピングとの親和性が高いです。カウルサイズそのものはフルカウルに劣りますが、デザインを上手く落とし込むのに長けています。

いくらくらいの費用が必要?

仮にフルカウルバイクのサイドカウルをラッピングしたとして、具体的には3万円くらいです。コレに加え、リアシートカウル、アッパーカウルと全てのカウルを痛バイク化していくなら10万円は見ておいた方が良いかも知れません。

部分的に痛バイク化するほど安く、逆に車体色を変えるほど全てに手を入れるなら高くなります。このほとんどはシートの印刷費用です。

印刷費用を安く抑えるコツは、印刷したシートをイラスト毎に裁断せず一枚で送ってもらうことです。各パーツの分解は自分でやれば大きくコストを減少させることが出来ます。これで10万円が8万円に収まるくらいの抑制効果が期待できます。

どのくらいの期間が必要?

痛車

これはバイクの形によって本当にまちまちです。

R1200GSのパニアケースをラッピングしたときは3時間でしたが、隼を痛バイク化したときは二日かかりました。
特にフルカウルの場合、ある程度はカウルを脱着した方が楽なことも有るので、その分を含めると実際に全ての作業が終わるまでには3日はかかると考えてまず間違いないです。

画像サイズには注意が必要

ファンメイドの作品に特に当てはまりますが、一般に広く流通している画像を使う場合、解像度が低く、拡大したときに荒さが目立ってしまうことが考えられます。

具体的にはA4サイズのイラストをサイドカウル一杯に広げるのは結構ギリギリのラインです。3mくらい離れるとわかりませんが、すぐ側で見ると粗が出てしまうかも知れません。

日本では二次創作のイラストが豊富に出回っているため、公式絵ではなく敢えて二次創作のイラストを採用する場合も有ります。これは制作者への交渉で高解像度イラストを入手しやすく、また許可も下りやすいからです。

逆にイラストを1から起こす企業ユースではこうした問題は起き辛いですね。それでもA2サイズくらいでは作っておいた方が良いでしょう。

補足:ヘルメットのみのラッピングというのも有り

装甲×少女

痛バイクはどうしても手間とコストがかかるため、気軽に出来る物ではありません。

そこでより簡単にキャラクターグラフィックを追加する手段としてヘルメットのラッピングもこのブログでは提唱しています。コスト的にはこちらの方がかなりお安く、半分くらいで作れるのがメリットです。またあまり他の方がやっていないので目立ち度が高いというのもポイントですね。

ヘルメットラッピングの始め方

痛バイクは戻せる

最後に、ペイントを除いてラッピングで作る痛バイクは全て元に戻せます。

私も過去に何度も元に戻して再ラッピング、ということをやってきました。パーツの上にシートを被せているだけなので戻すのは簡単なのです。なので痛バイク化自体は特に取り返しの付かない手法では無く、車両の下取り価格に影響しません。

趣味としてはコスト以外に大きなリスク無く楽しむことができます。